川越画廊 ブログ

2011年1月30日 内田静馬展

同じ風景が油彩あるいは木版画で描かれているとしたら、木版画により多くの詩情を感じるのはなぜなのだろう。
個人差もあるだろう、自分が版画を見慣れているとか、この作家についてある程度予備知識があって、どういう気持ちでこの風景を眺めたのかなどと思いめぐらしてしまうことも原因かもしれない。

今度の「内田静馬展」は本人自身に見てもらいたいような展覧会だ。
カタログに「・・おそらく身近にかかわった人たちも、その全貌は知らなかったのではないか・・」というようなことが書かれていたが、まさしく晩年10年以上交流した私も初めて見る作品、初めて知る事柄など多く驚いた、そして感動した。

おそらく作者自身これだけの点数を時系列に並べてみたことはないはずで、そして立派なカタログまで刊行されて、大きな感激と満足を得たはずである。

O学芸員のご努力で多くの作品の制作年が特定されて、今展のカタログは今後の内田静馬研究の貴重な資料となった。木版画は元々印刷技法の一種なので複製しても原作の感じを伝えやすいものだが、今回のカタログは特に用紙の選定がピッタリしていて、まるで木版画そのもののような風合いにも仕上がっている。

それにしても内田先生の生涯続いた木版画への情熱はどこから来たのだろうか。
旧家であっても先生の代はけして裕福だったとも思えず、自身の兄弟が20人、お子さんは7人もいた。戦後川田谷に戻った時は15人家族の主となったわけだ。
おそらく戦中戦後と生活者としての苦労は大きかったはずなのに、生涯木版画制作を続けたのだ。

作品の内容や位置については専門家に任せるとして、先生の仕事は今回の展覧会によって結実したのだ。

ぜひ多くの方に見ていただきたい展覧会である。



























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by kg142 | 2011-01-30 17:19 | アート