3月17日 小熊秀雄 池袋モンパルナス
(1938年6月に)
《古谷に連れられて、電燈線が料金未払のため切断されて、夜はローソクのもとで詩を書いているというこのダダイストのアパートの一室を訪れた。
彼は家具らしいものは机一つの部屋で、ゆったりとして、皮肉交じりのユーモアをたたえてぼくたちを迎え、彼のデッサンを見せてくれた。小さなスケッチ・ブックにペンで裸婦や風物をかいたもので、むき出しの感じが出ていた。不透明水彩画がぬってあるのは10円、単色は2円だという。
20円ほど支払うと、彼はフランスの画家はみなこうするのだと言いながら、売れたデッサンにペンでローマ字の署名をして、いくぶん満足そうな表情でそれらをぼくに手渡した。・・》 (版画収集の魅力)久保貞次郎著 より
この文章からすると、この時購入したカラーの作品は1点のみで、これ以降に購入がないとすれば、上記の作品がその時のものということになる。
ちなみに、久保貞次郎がその前年に、瑛九から購入したフォトデッサン集「眠りの理由」は1セット10円であった。(久保が3セット購入)
by kg142
| 2018-03-17 17:43
| アート